トラブルが起きてから条文を調べるより、契約する前に確かめておくほうが、はるかに手間がかかりません。この記事では、フリーランス新法の条文を「サインする前に何を見るか」という順番に並べ直し、8項目のチェックリストにしました。募集の段階から、契約期間の見方、確認メールの文例までを1ページで確認できます。
1. 条文は何と言っているか
- 募集情報(第12条):広告などで募集情報を出すとき、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、内容は正確かつ最新に保たなければなりません[1]。
- 取引条件の明示(第3条):発注者は業務委託をしたら「直ちに」、給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面かメール等で明示しなければなりません[1]。
- 支払期日(第4条):給付を受領した日から60日以内で、できる限り短い期間内に定めなければなりません[1]。
- 期間の条件:第5条の禁止行為は「1か月」以上の業務委託が対象、第13条・第16条の継続的業務委託は「6か月」以上が対象です(施行令第1条・第3条)[2]。
2. 平易な言い換え:サインの前に見る8項目
「誰に・何が・いつまでに」を、契約前に文字で確認できる形に直すと次のようになります。
| # | 確認すること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 募集ページの業務内容・報酬・期間と、提示された契約内容が食い違っていないか | 第12条 |
| 2 | 業務の内容(作業範囲・納品物・納期)が文字になっているか | 第3条 |
| 3 | 報酬の額(税込か税別か、交通費などの扱い)が書かれているか | 第3条 |
| 4 | 支払期日が具体的な日付かルールで書かれているか | 第3条 |
| 5 | 支払期日が「納品を受け取った日から60日以内」に収まっているか | 第4条 |
| 6 | 業務委託の開始日と終了日が分かるか(1か月以上かどうかの判断材料) | 施行令第1条 |
| 7 | 更新される契約なら、通算で6か月以上続きうるか | 第13条・施行令第3条 |
| 8 | 内容が未定の事項があるなら、いつ決めて明示されるか | 第3条 |
項目5の補足:契約で60日を超える支払期日を定めた場合は、受領日から60日を経過する日が支払期日とみなされます(条文の定め)[1]。ただし、そうなる前に契約書の段階で直しておくほうが安全です。日付の数え方は支払期日チェッカーで確かめられます。
3. 具体例:チェックを当てはめてみる
数字は説明用の仮の例です。次のような依頼メールが届いたとします。
| 項目 | この文面の状態 | 次の一手 |
|---|---|---|
| 2 業務内容 | 「修正」の範囲が不明 | ページ数・修正回数を確認する |
| 3 報酬 | 「月10万円」。税込か税別かが不明 | 税込・税別を確認する |
| 4・5 支払期日 | 日付がない | 具体的な日と、受領日から60日以内かを確認する |
| 6・7 期間 | 「10月から」で終了日がない | 終了日または更新の有無を確認する |
このように、4項目が埋まっていないことが契約前に分かります。第3条は、内容を定められない正当な理由がある事項については、決まった後に直ちに明示すればよいとしています[1]。「分からないまま始める」のではなく、「いつ決まるのか」を確認するのがポイントです。未定のまま始まったときの考え方は未定の明示の記事にあります。
4. サイン前チェックリスト(印刷・コピー用)
- □ 募集ページ(求人・クラウドソーシングの案件ページ)を保存し、契約内容と見比べた
- □ 作業範囲・納品物・納期が、メールかチャットか書面で文字になっている
- □ 報酬額と、税込・税別の別が書かれている
- □ 支払期日が日付かルールで書かれ、受領日から60日以内に収まっている
- □ 開始日・終了日(または更新の有無)が分かる
- □ 未定の事項と、決まる時期を確認した
- □ メールで条件を受け取った場合、書面の交付を求められることを知っている(第3条)[1]
- □ やり取りの日付を残している(日付の記録表)
5. 取引先への確認メール文例(コピーして使えます)
相手の文面に必要な事項が入っているかは、明示事項チェッカーに貼り付けて確かめられます。メールやチャットでの明示の考え方はこちらの記事、そもそも自分の取引が新法の対象かは対象になる人の記事で確認できます。
6. 支払いが後ろにずれたときの資金繰りの一案
支払期日が納品から最大60日先になる取引では、入金までの生活費・外注費をどう回すかも契約前に考えておく必要があります。請求書の支払いを早められるサービスを、選択肢として知っておく人もいます。
利用条件・手数料・審査はサービスごとに異なります。申し込む前に公式サイトで最新の内容を確認してください(本記事では条件や手数料を評価・断定していません)。
まとめ
契約前に確かめるのは、①募集と契約内容の一致、②業務内容・報酬・支払期日の明示、③支払期日が受領日から60日以内か、④契約期間(1か月・6か月)の4点です[1][2]。足りない項目は、サインの前にメールで埋めておきましょう。
出典(一次資料)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)第3条(取引条件の明示)・第4条(報酬の支払期日等)・第12条(募集情報の的確な表示)・第13条(継続的業務委託) — e-Gov 法令検索
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(令和6年政令第200号)第1条・第3条 — e-Gov 法令検索
本文の説明は上記の条文を分かりやすく言い換えたものです。制度は改正されることがあるため、最終的な判断は原文をご確認ください(参照日: 2026-09-25)。