支払いが遅れたとき、契約を急に切られそうなとき、「いつ何があったか」を日付で示せるかどうかで、その後の話しやすさは大きく変わります。フリーランス新法の主な規定は、条件の明示、支払期日、解除の予告といった日付と期間で組み立てられているからです。この記事では、案件ごとに残しておきたい4つの日付と、そのまま使える記録表、受領日から60日を数える計算例をまとめます。
1. なぜ「日付」を残すのか:条文が日付で書かれている
新法の主な規定を、日付の観点で並べ直すと次のようになります。
| 残したい日付 | 関係する条文 | 要旨(言い換え) |
|---|---|---|
| ① 取引条件を明示された日 | 第3条 | 発注者は業務委託をしたら「直ちに」、給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面かメール等で明示する[1] |
| ② 給付を受領した日(サービスなら提供を受けた日) | 第4条 | 支払期日は受領日から60日以内で、できる限り短く定める。定めがなければ受領日、60日超なら受領日から60日を経過する日が支払期日とみなされる[1] |
| ③ 契約上の支払期日と、実際に入金された日 | 第4条 | ②から数えた期限と見比べるための材料 |
| ④ 解除・不更新の予告を受けた日と、契約満了日 | 第16条 | 6か月以上続く継続的業務委託の解除・不更新は、少なくとも30日前までに予告する(例外あり)。予告日から満了日までに理由の開示を請求できる[1] |
どの日付も、あとから「言った・言わない」になりやすいものです。メールやチャットの日時、納品ツールの送信履歴、受領の返信など、第三者が見ても分かる形で残しておくと、取引先に確認するときも、相談窓口に話すときも整理しやすくなります[2]。
2. 案件ごとの日付記録表(コピーして使えます)
スプレッドシートやメモに、案件1件につき1行(または1ブロック)で次の項目を埋めてください。
ポイントは、①「明示された内容」と②「納品した日」を別々の欄にすることです。明示が遅れたのか、納品後に条件が変わったのかを切り分けやすくなります。明示の考え方は取引条件が未定のまま始まったときやチャットやメールでの明示で整理しています。
3. 計算例:受領日から60日を数える
第4条の60日は「給付を受領した日から起算して」と定められています[1]。次の例で、契約上の支払期日と見比べてみましょう(数字は説明用の仮の例です)。
| 項目 | 日付 |
|---|---|
| 納品物を発注者が受領した日 | 2026年11月10日 |
| 受領日から60日を経過する日 | 2027年1月9日 |
| 契約書の支払期日(「翌々月末払い」) | 2027年1月31日 |
この例では、契約書の支払期日(1月31日)が、受領日から60日を経過する日(1月9日)より後になっています。第4条の見方では、60日を超えて定めた場合は受領日から60日を経過する日が支払期日とみなされます[1]。ただし、実際の取引が条文の対象かどうか(発注者が特定業務委託事業者に当たるか、など)は個別に確認が必要です。記録表の日付を支払期日・遅延チェッカーや、締め日・支払日から最長日数を確かめられる支払サイト60日チェッカーに入れると、手計算の見間違いを減らせます。
4. 解除の予告は「満了日から逆算」して確かめる
第16条の予告は、継続的業務委託(施行令第3条で6か月以上)について、少なくとも30日前までに行うものとされています[1][3]。記録表の「予告を受けた日」と「満了日」を並べ、間が30日以上あるかを確かめます。30日に足りない場合や、理由が分からない場合は、予告日から満了日までの間に理由の開示を請求できます[1]。請求した日と回答の日付も記録表に残してください。逆算が面倒なときは契約解除・予告期間チェッカーが使えます。詳しくは契約の中途解除は30日前予告とはを参照してください。
5. 記録を残すときのチェックリスト
- □ 依頼を受けた時点で、取引条件の明示(第3条)がいつ・どの方法で来たかを記録した[1]
- □ 納品は、日時が残る方法(メール・納品ツール)で行った
- □ 先方が受け取ったことを示す返信や既読の記録を保存した
- □ 契約上の支払期日を、受領日から数えて60日以内か日付で確かめた
- □ 継続的な取引は、契約期間と更新の有無を記録表に書いた
- □ 取引先とのやり取りは、メールなど文面が残る手段に寄せた(口頭の内容は、あとからメールで確認した)
- □ 困ったときの相談先と申出制度(第17条)を事前に確認した[2][4]
6. 入金までの期間は、資金繰りの記録も一緒に
記録表で「受領日から入金日までの日数」が見えてくると、取引先ごとの入金の遅さも把握できます。入金までの期間が長い取引が続くときは、請求書の支払いを早められるサービスも選択肢の1つです。
こうしたサービスには利用条件・手数料・審査があります。申し込む前に必ず公式サイトで最新の内容を確認してください(本記事ではサービスの条件や手数料を評価・断定していません)。
まとめ
新法の主な規定は、明示、受領日から60日以内の支払期日、30日前までの解除予告といった日付で成り立っています[1]。案件ごとに、明示された日・受領日・支払期日と入金日・予告日と満了日を記録表に残しておけば、確認も相談もしやすくなります。まずは進行中の案件1件から、上の記録表を埋めてみてください。
出典(一次資料)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)第3条(取引条件の明示)・第4条(報酬の支払期日等)・第16条(解除等の予告)・第17条(申出等) — e-Gov 法令検索
- 公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和五年法律第二十五号)」 — 公正取引委員会/厚生労働省「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ」 — 厚生労働省
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(令和6年政令第200号)第3条 — e-Gov 法令検索
- 同法第17条(申出等) — e-Gov 法令検索
本文の説明は上記の条文・案内を分かりやすく言い換えたものです。制度は改正されることがあるため、最終的な判断は原文をご確認ください(参照日: 2026-09-25)。