これまでは社員や派遣で回していた仕事を、個人のデザイナーやライターに頼むことになった――。そんな担当者が最初にぶつかるのが「フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)で、発注側は何をすればいいのか」という疑問です。この記事では、依頼の前から契約終了までを時系列で並べ、条文ごとに確認することをチェックリストにしました。フリーランスの側から見る場合は、取引先に何を求められるかの目安としても使えます。
1. まず「自分が発注側に当たるか」を確認する
この法律で義務を負う「特定業務委託事業者」は、従業員を使う個人事業主、または役員が2人以上いる法人か従業員を使う法人とされています[1]。相手方の「特定受託事業者」は、従業員を使用しない個人、または代表者1人だけで従業員のいない法人です[1]。判定は発注者の要件の解説と対象・保護範囲チェッカーで確かめられます。公式の案内は公正取引委員会と厚生労働省のページにまとまっています[10]。
2. 時系列で見る発注側の確認事項
| 場面 | 条文 | 発注側が確認すること(要約) |
|---|---|---|
| 募集するとき | 第12条 | 募集情報(業務内容・場所・期間・報酬・契約解除・募集者に関する事項)に虚偽や誤解を生じさせる表示をせず、正確かつ最新に保つ[2] |
| 依頼した直後 | 第3条 | 直ちに、給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面またはメール等で明示する。決められない正当な理由がある事項は、決まった後直ちに明示する[3] |
| 納品を受けたとき | 第4条 | 支払期日は受領日から60日以内で、できる限り短く定める。定めがなければ受領日、60日を超える定めは60日を経過する日が支払期日とみなされる[4] |
| 1か月以上の依頼 | 第5条 | 受領拒否・報酬の減額・返品・買いたたき・購入利用強制、利益提供の要請、不当な給付内容の変更・やり直しなどをしない[5][8] |
| 就業環境 | 第14条 | ハラスメントでフリーランスの就業環境が害されないよう、相談体制の整備など必要な措置を講じる[6] |
| 6か月以上の契約を終えるとき | 第16条 | 解除・不更新は少なくとも30日前までに予告する。理由の開示を求められたら遅滞なく開示する[7][9] |
期間による線引き(1か月以上・6か月以上)は、同じ発注先でも依頼ごとに変わります。詳しくは対象の範囲の表を参照してください。
3. 社内で回せるチェックリスト
依頼の前
- 募集文の業務内容・報酬・期間が、実際の依頼内容と食い違っていないか(第12条)
- 報酬の額と支払期日を、依頼時点で決められるか。決められない事項があれば、いつ決まるかを担当者が把握しているか(第3条)
依頼の直後
- 給付の内容・報酬の額・支払期日などを、書面かメール等で送ったか。送付日を記録したか(第3条)
- フリーランスが書面を求めたら、遅滞なく交付できる体制があるか(第3条)
納品と支払い
- 受領日を記録しているか。そこから60日以内に支払期日が収まっているか(第4条)
- 経理の締め日・支払日の運用が、受領日から60日を超えていないか。支払いサイト判定ツールで確認できます
やり直し・終了
- 納品後の修正依頼が、当初の依頼内容の範囲かを確かめたか(第5条第2項)
- 6か月以上続く契約を終えるときは、30日前までに予告できるか(第16条)
4. 明示事項の控え(コピーして使えます)
この控えは、法律で定められた書式ではありません。条文に挙げられた事項を抜けなく確認するための社内メモです。実際の明示は取引条件明示書メーカーや発注書メーカーや明示事項チェッカーで抜けを見つけてから送ると安心です。
5. 発注書や請求書のやり取りを整えるには
明示・受領日・支払期日の記録は、発注書や請求書の書式がそろっていると残しやすくなります。書類の流れは発注書と明示の対応表にまとめています。
機能や料金は変わることがあります。利用前に公式ページで最新の内容を確認してください(本記事ではサービスの優劣を評価していません)。
まとめ
発注側の義務は、募集(第12条)→明示(第3条)→支払期日(第4条)→禁止行為(第5条)→就業環境(第14条)→終了の予告(第16条)の順に並べると整理しやすくなります。まずは依頼直後の明示と、受領日の記録の2点から社内の運用に載せてみてください。
出典(一次資料)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)第2条(定義) — e-Gov 法令検索
- 同法 第12条(募集情報の的確な表示)— e-Gov 法令検索
- 同法 第3条(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)— e-Gov 法令検索
- 同法 第4条(報酬の支払期日等)— e-Gov 法令検索
- 同法 第5条(特定業務委託事業者の遵守事項)— e-Gov 法令検索
- 同法 第14条(ハラスメント対策)— e-Gov 法令検索
- 同法 第16条(解除等の予告)— e-Gov 法令検索
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(令和6年政令第200号)第1条 — e-Gov 法令検索
- 同施行令 第3条 — e-Gov 法令検索
- 公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和五年法律第二十五号)」 — 公正取引委員会/厚生労働省「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ」 — 厚生労働省
本文の説明は上記の条文・案内を分かりやすく言い換えたものです。制度は改正されることがあるため、最終的な判断は原文をご確認ください(参照日: 2026-09-25)。