「取引先は個人事業主が1人でやっている会社。こういう相手にもフリーランス新法の禁止行為は効くの?」という疑問は、よく聞かれます。結論から言うと、条文は発注者の側にも要件を置いています。この記事では、第2条の定義と、条文ごとの「主語」の違いを整理し、取引相手を確認するチェックリストにまとめます。
1. 条文は発注者をどう定義しているか
第2条は、受注する側(特定受託事業者)と発注する側(特定業務委託事業者)の両方を定義しています[1]。受注側の原文は次のとおりです。
「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。一 個人であって、従業員を使用しないもの 二 法人であって、一の代表者以外に他の役員…がなく、かつ、従業員を使用しないもの
発注側(特定業務委託事業者)の要件を、台帳の整理に沿って平易にまとめると次のとおりです[1]。
| 発注者のタイプ | 特定業務委託事業者に当たるか |
|---|---|
| 従業員を使っている個人事業主 | 当たる |
| 役員が2人以上いる法人 | 当たる |
| 従業員のいる法人 | 当たる |
| 従業員を使っていない個人(1人で事業をしている) | この枠組みでは当たらない(受注側と同じ「特定受託事業者」の形) |
| 代表者1人だけで従業員のいない法人(いわゆる一人会社) | 同上 |
つまり、フリーランス同士の取引では、発注側がさらに人を雇っていなければ、第5条のような禁止行為の規定が働く前提を満たさない場合があります。「相手の肩書き」ではなく、「従業員がいるか」「役員が何人か」で決まる点がポイントです。
2. 条文によって「主語」が違う
同じ法律でも、条文ごとに義務を負う相手の呼び方が書き分けられています。
呼び方が違うということは、対象になる発注者の範囲が条文ごとに異なり得る、ということです。どの条文がどの発注者に及ぶかの正確な線引きは、第2条の定義と各条の文言を、原文と公式の案内で確認してください[4]。この記事では、条文の主語が違うという事実の紹介にとどめ、個別のケースが当たるかどうかは断定しません。
3. 取引の「長さ」の条件もある
発注者の要件を満たしても、禁止行為(受領拒否・報酬の減額・返品・買いたたきなど)が働くのは、業務委託の期間が政令で定める期間以上のものです。施行令第1条は「1か月」と定めています[5]。さらに、育児・介護への配慮や解除の事前予告(30日前)は「6か月」以上の継続的業務委託が対象です[6]。「相手が誰か」と「取引がどれくらい続くか」の2つの軸で確認すると整理しやすくなります。期間の違いは契約期間でルールが変わる?「1か月」「6か月」早見表でも整理しています。
4. 取引相手を確認するチェックリスト
- □ 自分は「従業員を使用しない個人/一人会社」に当たるか(受注側の要件)[1]
- □ 相手は法人か個人事業主か。法人なら、役員が2人以上か、従業員がいるか[1]
- □ 相手が個人事業主なら、従業員を使っているか
- □ 業務委託の期間は1か月以上か。6か月以上続く見込みか[5][6]
- □ 取引条件は書面かメール等で示されているか(第3条)[2]
- □ 相手の従業員の有無や役員の人数がわからないとき、どう確認するか(公式の相談窓口に聞く)[4]
相手の内部事情(従業員の有無など)は外から見えにくいため、「当たる・当たらない」を自己判断で決めつけず、困ったときは公式窓口に相談するのが安全です。条件の確認が済んだら、「特定受託事業者」の判定や、取引条件の示し方を確かめられる取引条件明示書メーカー(無料)も使えます。
5. 相手によって入金のリスクは変わる
法律の保護が及ぶかどうかにかかわらず、取引先の規模や支払いの慣行によって、入金までの期間や遅れやすさは変わります。入金が遅れる場面に備えて、請求書の支払いを早められるサービスを選択肢に入れておく方法もあります。
こうしたサービスには利用条件・手数料・審査があります。申し込む前に必ず公式サイトで最新の内容を確認してください(本記事ではサービスの条件や手数料を評価・断定していません)。
まとめ
フリーランス新法は、発注者の側にも「従業員を使っているか」「役員が何人か」といった要件を置いています[1]。加えて、条文ごとに主語が書き分けられ、取引の期間(1か月・6か月)の条件もあります[3][5]。「相手が誰か」「どれくらい続くか」の2軸で確認し、迷うときは公式窓口に相談してください。
出典(一次資料)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)第2条(定義) — e-Gov 法令検索
- 同法第3条(取引条件の明示) — e-Gov 法令検索
- 同法第5条(禁止行為) — e-Gov 法令検索
- 公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和五年法律第二十五号)」 — 公正取引委員会/厚生労働省「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ」 — 厚生労働省
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(令和6年政令第200号)第1条 — e-Gov 法令検索
- 同施行令第3条/同法第13条・第16条(継続的業務委託) — e-Gov 法令検索
本文の説明は上記の条文・案内を分かりやすく言い換えたものです。制度は改正されることがあるため、最終的な判断は原文をご確認ください(参照日: 2026-09-25)。