「請求書を出してもらわないと支払えない」「検収が終わるまで待ってほしい」。取引先からこう言われて、納品から入金まで思ったより時間がかかった経験はありませんか。フリーランス新法には、報酬の支払期日を「いつから数えるか」を定めた条文があります。この記事では、その起算日の考え方と、日付を確認するときのチェックリストを整理します。
1. 条文は何と書いているか
第4条第1項は、報酬の支払期日について、特定受託事業者(フリーランス)の給付を受領した日から起算して60日の期間内で、かつできる限り短い期間内に定めなければならないとしています[1]。役務(サービス)の提供の場合は、提供を受けた日が起算の基準です。
平易に言い換えると、数え始めるのは「納品物を受け取った日(サービスなら提供を受けた日)」です。条文のこの部分には「請求書を受け取った日」も「検収が完了した日」も出てきません。つまり、請求書の提出が遅れたことや、発注者側の社内確認が長引いたことで、数え始める日が後ろにずれるとは条文上は書かれていません。ただし、個別の取引でどう扱われるかは事情によって異なるため、迷うときは公式の相談窓口に確認してください[2]。
| よくある言い方 | 条文が基準にしている日 |
|---|---|
| 「請求書が届いた日から60日」 | 給付を受領した日(請求書の到着日ではない) |
| 「検収が完了した日から60日」 | 給付を受領した日(検収日と書かれてはいない) |
| 「月末締め翌々月末払い」 | 受領日から60日以内に収まっているかを、実際の日付で確認する |
2. 定めがないとき・60日を超えて定めたとき
契約書やメールに支払期日がまったく書かれていない場合や、60日を超える日が書かれている場合のために、第4条第2項・第3項にみなし規定があります。要旨は次のとおりです[1]。
- 支払期日の定めがないときは、給付を受領した日が支払期日とみなされる
- 60日を超えて定めたときは、受領した日から60日を経過する日が支払期日とみなされる
たとえば、10月1日に納品物を受領した場合、60日を経過する日は11月30日です。契約書に「翌々月末(12月31日)払い」とあって、受領日から数えると60日を超えているなら、条文上は11月30日が支払期日とみなされる、という見方になります。日付の数え方に自信がないときは、支払期日・遅延チェッカーで受領日を入れて確かめてみてください。
3. 再委託の場合は別のルールがある
元請けから再委託された仕事で、元の委託の支払期日などを明示した場合には、元委託の支払期日から30日以内という別の定めがあります[1]。この点は元請けから再委託された仕事の報酬はいつ支払われる?で詳しく説明しています。
4. 日付を確認するチェックリスト
- □ 納品した日(メール・納品ツールの送信日時)を記録した[1]
- □ 取引先が「受け取った」と連絡してきた日があれば、そのメールを保存した
- □ 契約書・発注書・メールに書かれた支払期日を確認した[3]
- □ 受領日から数えて、書かれた支払期日が60日以内に収まっているか日付で確かめた
- □ 「請求書の提出」や「検収」を支払いの条件とされている場合、その手続きの期限や流れを取引先に確認した
- □ 請求書は納品後すみやかに送り、送付日も記録した(支払事務を早めるための実務上の工夫です)
- □ 期日を過ぎても入金がないときの連絡方法を調べた[4]
なお、第4条の規定は、発注者が従業員を使う個人や、役員2人以上または従業員のいる法人などの「特定業務委託事業者」である場合に関わります。取引相手が当てはまるかは発注者が個人事業主だとフリーランス新法は適用される?で確認できます。
5. 取引先に確認するときの伝え方
起算日の考え方を前面に出して争うより、まず日付の認識をそろえるほうが話は進みやすくなります(文面は一例です)。
督促が必要になったときの文例は支払い督促メールの書き方・文例、督促しても払われないときの申出制度は督促しても払われないとき、次にできることにまとめています[4]。
6. 入金が先になるほど、資金繰りの備えが効く
支払期日が受領日から60日近く先になる取引が続くと、その間の生活費や経費の手当てが課題になります。請求書の支払いを早められるサービスは、入金までの期間をつなぐ選択肢の1つです。
こうしたサービスには利用条件・手数料・審査があります。申し込む前に必ず公式サイトで最新の内容を確認してください(本記事ではサービスの条件や手数料を評価・断定していません)。
まとめ
報酬の支払期日は、給付を受領した日から60日以内で、できる限り短く定める必要があります。定めがなければ受領日、60日を超えて定めたときは受領日から60日を経過する日が支払期日とみなされます[1]。まず納品した日と契約上の支払期日を並べて日付で確かめ、食い違いがあれば取引先に支払予定日を確認する、という順で進めてみてください。
出典(一次資料)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)第4条(報酬の支払期日等) — e-Gov 法令検索
- 公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和五年法律第二十五号)」 — 公正取引委員会/厚生労働省「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ」 — 厚生労働省
- 同法第3条(取引条件の明示) — e-Gov 法令検索
- 同法第17条(申出等) — e-Gov 法令検索
本文の説明は上記の条文・案内を分かりやすく言い換えたものです。制度は改正されることがあるため、最終的な判断は原文をご確認ください(参照日: 2026-09-25)。